いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、ロープレスキューに適したフルハーネス型安全帯(フルボディハーネス)のことについて解説してまいります。
- 消防士になりたての方
- 救急隊の方
- ロープ高所作業をする予定の方
- 高所作業をする予定の方
に向けた記事内容となっています。
Contents
ロープレスキューに最適なハーネス
初めに結論です。
ロープレスキューに最適なハーネスは。
こちらです!
ペツルのチェストハーネス「トップクロールs」
チェストハーネスとシットハーネスをつなぐ「デルタ」
ペツルのシットハーネス「ファルコン」
以上の3つがベストレスキューハーネスです。
それでは、解説していきます。
ロープレスキューに適したハーネスにはどういったタイプ、用途のものがあるの?
では、まずメーカーからですが一番有名なのはやはりペツル(petzl)ですね。

ここはロープアクセスのパイオニア的なメーカーですので、ここの資機材を元に真似をしているメーカーも多数存在しています。
ですから、ペツルを選んでおけば間違いないというのが本音であります。
ヨーロッパのメーカーは他にも、CT(クライミングテクノロジー)やシンギングロックなどがあります。
アメリカ系のメーカーはというと、CMCなどがあります。
アメリカのハーネスはすこし大きい印象があるので、かなり体格の大きい人向けですね。
ヨーロッパのハーネスは日本人の体格に割と近いので体に対するフィット感も高いです。
サイズを選ぶとするなら、「1」というサイズを選んでおけば大半の方には合います。

「2」サイズは、そこそこ体格が大きいという程度では選択してはいけません。
あとでベルトの余長が大変なことになり、まとめるのにひと苦労ですw

タイプとしましては、
- 「ワークポジショニング/フォールアレストハーネス」
- 「フォールアレストハーネス」
- 「ロープアクセスハーネス」
- 「ツリーケアハーネス」
- 「レスキューハーネス」
などがあります。
横文字、カタカナばっかりで分かりづらいですよね。
この部分の解説を。
ワークポジショニング

「ワークポジショニング」とは、ハーネスに体重のすべてをあずけて作業する。
フォールアレスト

「フォールアレスト」とは、墜落のおそれのある場所、作業、移動を行うこと。
ロープ等に体重は乗っていないものの墜落した際に地面への衝突を防ぐために考慮されているもの。
レストレイン

「レストレイン」とは、墜落する位置への移動を制限させる。
※「レストレインハーネス」というものはない。
ロープアクセス

「ロープアクセス」とは、ロープを使用した高度な移動技術のこと。
ツリーケア

「ツリーケア」とは、樹木の伐採、剪定等を行うこと。
つまり、
- 「ワークポジショニング/フォールアレストハーネス」はロープにぶら下がることもでき、安全帯としても使用できるハーネス。
- 「フォールアレストハーネス」墜落する可能性のある場所で使用するハーネス、安全帯。(ワークポジショニングがないものが多い)
- 「ロープアクセスハーネス」ロープアクセスに特化したハーネス。(ワークポジショニング/フォールアレストも含む)
- 「ツリーケアハーネス」樹木伐採や剪定に適したハーネス
ということになります。
ハーネス別の特徴
ワークポジショニング/フォールアレストハーネスでできること
ロープアクセス、高所作業時の安全帯。最もオーソドックスなもの。
フォールアレストハーネスでできること
ロープにぶら下がりながら作業ということはできない。
備え付けのはしごなどを登る時に、落下防止装置をハーネスに取り付ける。
基本的に身体は自分で支えている、地物建物に身体を預けていることが基本である。
特徴として、ハーネスの中で最も軽量である。
ハーネスの中で最も軽量で動きやすい。
ロープアクセスハーネスの特徴
ロープアクセスハーネスには、ロープアクセスをより効率よくできるように考えられている。
胸には小さなアッセンダーが付いていて、ロープを効率よく早く登る時に使用することができる。
ぶら下がり時の安定やサポート感に優れて万能ではあるが、その分重いものが多い。
ツリーケアハーネスの特徴
ツリーケアハーネスには、腰の中央のD環がありません。
これは、なぜかというといろんな態勢をとれるようにするためです。
私自身、ツリーケアを生業としている方と交流したときに体験させていただいたのですが通常のハーネスですと行動が制限されます。
これが、ツリーケア用のハーネスですと腰のD環が左右に可動しますので腰をひねり作業がうまくできるようになっているんですね。

はじめは、これどうなっているんだろうと疑問に思っていましたが、やはり体験すると違いますね。
ハーネスの種類等については、こういったものがあるということを理解していただければ大丈夫です。
おのずと自分に適したハーネスが何なのか、想像できたかと思います。
ロープレスキューに適したハーネスの中で法適合しているものは? 法適合していないものは使えないの?
つづいて、法に適合しているハーネスのついてですね。
ここはみなさん、よく考えて購入するようにしてください。
とくに、公費での購入、車両と抱き合わせての購入などですね。
一度購入してしまうと耐用年数10年ですので、なかなか買ってもらえませんし、このハーネスが良いと希望しておいて法に適合していないとなると問題になりがちです。
ペツルのハーネスで説明いたします。ペツルばっかりで申し訳ないですw
ペツル製品の墜落制止用器具の規格への適合状況
こういった情報が日本の代理店アルテリアのホームページで掲載されております。
ですから、各メーカーの代理店にも必ず確認して購入するようにしてくださいね。
じゃあ、法に適合していないハーネスは使えないのか、というとそうでもないです。
ただ、すこしめんどくさいです。
まず、法に適合しているフルハーネス型安全帯を着用します。
そのあとに、身体保持器具として着用したいフルボディハーネスを着用するのです。
これであれば、法を犯すことはありません。
ちなみに、この墜落制止用器具着用についての法改正ある前は、胴ベルト型安全帯を着用し、その上にフルボディハーネスを着用しなければなりませんでした。
逆に危険ですので、そんなことしている人はもちろん見たことがありませんが。。。
法のとおり、とするとそうしていかなければなりません。
のり面でのロープ高所作業員だと、現場にあった安全帯兼身体保持器具を着用していましたね。

筆者の選ぶロープレスキューに適したハーネス
ロープレスキューをする方へ、ぜひとも検討していただきたいのは
もちろんペツル製で、フルボディハーネスではなく「トップクロールs」と「ファルコン」の組み合わせです。
なぜ、分離タイプなのか。
それは、メンテナンスの面とコスト面からの最適解です。
一体型でももちろん良いものです。
たとえば、アバオボッドファスト。
こちらのハーネスは背中のフォールアレストD環部分から、太もものレッグループにかけて繋がっています。
これにはもちろんメリットがあり、墜落の衝撃を腰だけでなく、両脚にも分散させるためにと考えられています。
ですが、もちろんデメリットがあり、基本的に長時間ロープにぶら下がり作業することを前提で考えられているため
腰、脚のパッドが分厚く、大きめでその分食い込みも軽減され、結果快適になります。
ですが、ロープレスキューに携わる人間がこれだけ長時間ロープにぶら下がるのかというと
そうではありませんよね。
アテンダーであれば、チームの中でも長い時間ロープにぶら下がる可能性がありますが。
他の隊員であれば、ほとんどの活動を地上で行うことになります。
その活動において、重く、分厚く、大きいハーネスを着用することは理にかなっておりません。
ですから、軽くて、薄い、そして要求される性能はすべてクリアしているこの組み合わせられたハーネスを推薦するわけです。
また、分離型のハーネスを選ぶ理由のもうひとつとして、破損や不具合発生時、新型モデルが出た時にどちらかの交換で済みます。
最近のアップデートで「トップクロール」が「トップクロールs」と「トップクロールL」という2種類に改められ、販売されましたね。
こういった場合に、分離型ですと容易に交換ができるわけですね。
また、どちらかに破損が起きた場合でも片方交換するだけで済むので、お財布にも優しいですよね。
ということで、筆者の選ぶベストフルハーネスは「トップクロールs」と「ファルコン」の組み合わせでした。
火災時のフルハーネス型安全帯着用について
ここで、すこし余談ですが火災の時の安全帯着用についてです。
火災時に着用する防火衣、これは耐熱性が高いことはもちろんなのですが
皮膚と防火衣の間に空気層を作ることでより人間に熱さが伝わりにくい構造になっております。
そこにフルハーネス型安全帯を着用すればどうなるか。
もちろん空気層がつぶれて、防火衣の性能がフルに機能しなくなるわけです。
さらに、ハーネスの素材自体は熱に強いわけではありませんので防火衣の上からフルハーネス型安全帯の着用は現実的ではないのです。
海外の消防士たちの着用している防火衣はここももちろん考えられていて
防火衣の内部にフルハーネスが縫い付けられており、必要に応じて胸から、腰から、背中からD環を取り出すことができ、使用することができます。
着用の手間も1回で済むので、効率的ですよね。
日本の「墜落性用器具の着用」についての規則の中には、
墜落制止用器具を使用することが著しく困難な場合には、保護帽の着用等の代替措置を行う必要があること。
墜落制止用器具ガイドラインより
と書かれており、ここの「保安帽の着用等の代替措置」に該当すると解釈できます。
保安帽は防火帽、フルハーネス型安全帯の着用については胴ベルト型安全帯の着用とする。
こういった解釈としてとらえて構いません。
現状、防火衣とフルハーネス型安全帯が一体となっていないものを着用している方たちは以上のような措置をとるしか方法がありません。
これにもっとも近い防火衣の着用をしているのは愛知県の豊田市消防本部の防火衣ですね。

しかも防火衣の上衣の上から、胴ベルト型安全帯を巻くのではなく、防火ズボンに巻いているので
防火衣の空気層を潰さないようにと考えられていますね。
ズボンにベルトを巻くメリットは他にもありますが、ここでは割愛いたします。
ロープレスキューに適したハーネスとは? まとめ
いかがだったでしょうか?
これから、ますますこの「フルハーネス型安全帯」の導入というのは加速していきます。
時代に取り残されず、より安全に活動するためにしっかりと理解していきましょう。
不明な点や質問がありましたら、遠慮なくコメント欄のほうにどうぞ。
この記事がいいなと思ったら、同僚や友人に紹介していただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
最近のコメント