なぜ現場でロープレスキューを選択するのか考えてみよう

救助

みなさん、こんにちは。

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

今回はロープレスキューの「技術」ではなく「考え方」の記事となっています。

みなさんに問いかけていきますので、一緒に考えてみましょう。

 

ロープレスキューに関連する過去の記事
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(必読)ロープレスキューに適したハーネスとは?
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っと、その前に私の簡単なプロフィールです。
kouと申します。
10年以上消防士として勤務していました。
在職中のほとんどを救助隊として過ごし、隊長、機関員、隊員の経験もあります。
現在は退職して、消防士の後輩向けに情報発信をしています。
もうすこし気になる方はトップページより、プロフィールを御覧ください。

それではまいりましょう。

 

なぜ、ロープレスキューを選択するのか?

出典:和歌山市

ロープレスキューを活かすことができるのはどのような現場ですか?

低所や高所で起きた災害現場ですかね。

低所、高所の災害現場でロープレスキューでないと救助できませんか?
他に手段はありませんか?

 

どのような災害が起きるのか想定できない中で

低所や高所で救助しなければならないとしたときに

プランとしてロープレスキューが浮かぶのではないでしょうか?

 

その前に現場で必ず確認してほしいことがあります。

ちょっと遠回りするけれど、歩いていけば安全に要救助者に接触でき

そのまま担架に収容して、徒手搬送で救出完了できませんか?

 

それと同じく、消防車両(SUVタイプなど)では現場のすぐそばまで近づくことはできませんか?

人員、資機材、要救助者の搬送、体力的にも消耗を抑えることができますね。

 

他には、何がありますか?

出典:埼玉県央広域消防本部

消防には三連梯子、クレーンやはしご車がありますね。

敷地が広く、障害物も少ない。

それであれば、クレーンやはしご車を使うことも視野にいれることができます。

このように、ロープレスキューを選択する前にもっと簡単に救助できる方法がないか

当たり前ですが

ロープレスキューが前提ではなく
他の救助方法も検討していかなければなりません。

ちなみにレスキュー3の講習では

ヘリコプターでの救助は最終手段としています。

意外ですよね!

理由としてはバックアップが効かないからです。

ヘリが落ちてしまったら、機内にバックアップがあったとしても意味をなさないからですね。

どのロープレスキューを選択するのか?

では、災害現場の状況から
ロープレスキューで救助することが適切だと判断して
どのロープレスキューを選択しますか?

ここでいうロープレスキューとは

三つ打ちロープを使用する消防救助操法、編みロープを使用するロープレスキューを指します。

編みロープを使用したロープレスキューには

いわゆる、ヨーロッパ式やアメリカ式と呼ばれるロープレスキューがありますね。

それらの中から選択する際にも災害現場状況で判断しなければなりません。

 

では、その選択の線引はどのようにしていますか?

様々な環境要因が考えられますが

「要救助者までの高さ」がひとつのキーポイントです。

 

三つ打ちロープレスキュー選択の線引

出典:三重県

三つ打ちロープを使用したロープレスキューを選択する際の
「高さ」の具体的な分岐点はどのくらいでしょうか?

ひとつの目安は「三連梯子の長さ3〜9m」です

 

なぜでしょうか?

それは、三連梯子の長さを超えるような高さとなると

消防救助操法で対応できる救助方法が少なくなるためです。

 

また、三つ打ちロープは伸び率が高いのでロープの長さが長ければ長いほど作業効率が悪いです。

イメージとして引き上げる際に、ロープが伸びてしまうため引き上げにくいといったことです。

「シンプルでスピーディ」ですが、一度救出システムを組み上げてしまうと

臨機応変に対応することが難しく、確保も隊員のカラダに任せきりなことも不安要素です。

その上、安全管理や隊員間の意思疎通も難しくなります。

 

これらの要因から、三つ打ちロープを使用したロープレスキューは

「三連梯子の長さ3〜9m」の高さ以内の救助現場が適しているといえます。

 

編みロープを使用したロープレスキューを選択する理由は?

出典:CMRCA

では、3〜9m以上の高さのある救助現場で

なぜ編みロープを使用したロープレスキューが好ましいといえるのでしょうか?

それは圧倒的に「安全性」が高いからです。

まず、ヨーロッパ式やアメリカ式の共通点として支点、ロープ、確保は2つ以上でとる原則

2アンカー、2ロープ、2ポイント

が徹底されております。

この原則により、どれかひとつが破断したとしても

片方がバックアップとして機能します。

そして、「確保」【消防救助操法においては身体確保(腰確保、肩確保を指す)】が

編みロープを使用するロープレスキューでは資機材による確保が原則です。

 

それは身体確保では、不意の落下に対応できないことが実験の結果判明しているためです。

例えば、要救助者+隊員+装備=200kgだとしたら?
あなたは身体確保で止められる自信はありますか?

普通は止められないですよね。

仮に落下したとするならば、衝撃荷重が発生し200kg以上の負荷が加わるのですから。

 

  • 支点は2箇所(複数)、ロープは2本、取り付ける箇所が2箇所以上あること
  • このどれらも、片方がなくなっても対応できるバックアップがあること
  • 人が耐えきれないような荷重も資機材に一任していること
  • ヒューマンエラーが起きにくい資機材になっていること
  • ロープや資機材から手を話すことが容易であること
  • 資機材の種類が多く、臨機応変な対応がすぐに可能であること
  • 人間に加わる衝撃を抑える仕組みがある。

これらのことから三つ打ちロープを使用したロープレスキューよりも安全だと言えます。

ロープの長さが足りない、一時的に引き上げたり下げたりしなければならない場合など

迅速な対応が求められる救助現場において、編みロープを使用したロープレスキューは

しっかりと確立されているといっていいでしょう。

ロープレスキューを選択するとした時の注意点

出典:CMRCA

要救助者(80kg)を引き上げるためにどのくらいの力を必要でしょうか?

金沢大学の研究によると、平均的な男性の牽引力(綱引きのように引く力)は最大で50kgほど

ですが、ロープレスキュー時に必要な牽引力は瞬間的に大きな力が必要なのではなく継続的に引く力が必要です。

 

それらを考慮すると、ひと一人が引くことのできる力は20〜30kg程度となります。

消防職員など体力に自信のある方はそれ以上あるでしょうね。

 

その、ひと一人あたり引くことのできる力を考慮して

どれほどの「倍力システム」を組む必要がありますか?

災害現場において、人員はどれだけ確保できますか?

1人 で 3倍力システムを組むと 3人分の力
2人 で 3倍力システムを組むと 6人分の力
3人 で 3倍力システムを組むと 9人分の力

となります。

では、環境の良い訓練時に要救助者を引き上げる時
何人分の力で引き上げることができていますか?

仮に6人分の力としましょう。

それが、災害救助現場において訓練時では引き上げられていたはずの

「6人分の力」では引き上げられないという状況になりました。

 

あなたはどうしますか?
引く人数を増やしますか?
倍力システムをさらに高倍力にしますか?
他にはどんな手立てを打ちますか?

その前に考えてほしいことがあります。

  • 救出システムには問題は発生しておりませんか?
  • プルージックは適正な箇所、適正な向きでしょうか?
  • カムデバイス(レスキューセンダーなど)も適正に取り付けられていますか?

 

別の視点からも考えてみましょう。

進入して、要救助者に接触した隊員は担架に収容して

担架にアテンド(介添え)する場合と誘導ロープを引く場合があります。

 

ここには問題は起きていませんか?

進入した場所が不安定な場所であれば、隊員の取る動きとして

  • 自己確保(セルフビレイ)があります。これが取られたままではありませんか?
  • 山岳救助の現場であれば、枝葉が生い茂る中での活動となります。
    この枝葉に担架やハーネス、資機材などが引っかかってはいませんか?

 

ここで考えてほしいことは

「引き上げる力」に問題は発生していないこと

「引き上げる力」が足りないのではなく、
環境やシステムの影響を受けていることです。

それに気づかず、容易に「引き上げる力」を増やすことは

システムの破壊、資機材の破断、要救助者と隊員の跳ね上げなど思わぬ衝撃が起きてしまうことに繋がりかねません。

通常の訓練では可能であったこと。これらが災害現場において可能でなくなった時

迅速さが求められますが、今一度「安全、確実」を求め確認を行いましょう。

なぜ現場でロープレスキューを選択するのか考えてみよう のまとめ

三つ打ちロープを使用した消防救助操法

編みロープを使用したロープレスキュー

どちらもメリット・デメリットが存在しています。

それらから災害現場に応じ選択して、要救助者を救助しなければなりません。

 

また、隊長であれば、隊員の習熟度も考慮する必要もあります。

隊長だけが熟知していたとしても、活動のメインとなる隊員たちの習熟度が低ければ

その救助活動は「安全確実迅速」なものとなるかは疑問ですよね。

 

逆に、救助隊経験の浅い隊長で隊員の方が熟知していた場合も同様で

全体を把握する必要のある隊長が管理することが難しくなるためです。

「災害現場」「救助隊のロープレスキュー習熟度」

これらを勘案して、「ロープレスキュー」を選択するべき。

となれば、その救助活動はよい活動となるでしょう。

今回は、皆さんに「問いかけ」をするような記事となりましたが

いかがだったでしょうか?

知識や技術はとても大事です。

それらを最大限に活用できる考え方について

みなさんに知っていただけたら嬉しいです。

記事の内容がよければ、同僚や友人に紹介していただいたり

コメントを頂けると大変励みになります。

ご不明な点や質問等も遠慮なくコメント欄へどうぞ。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

参考資料
金沢大学研究資料

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6 件のコメント

  • 低所や高所救助ではロープレスキューが主流であり、多く現場採用されますよね。ロープレスキューに目いきがちで、その他の方法が見えなくなってしまいがちです。これはその他の救助方法にも言える事ですよね。例えば、事故車両でのドア開放。油圧器具などでの開放などが選択されがちですが、その前にドアを破壊する必要があるかどうか?ガラスのみを破壊し、内側からドアロックを解錠し、進入出来るのではないか?などの選択肢を持つのも大事な救助作業だと思います。

    • いずみさん、コメントありがとうございます!
      そうです。
      自身で勉強して得た知識、訓練で培った技術を災害現場で活用することは非常に大切ですが
      知識や技術を自身の「欲」で活用しては本末転倒です。
      知識や技術はあくまでも「引き出し」のひとつ。
      最小限の人数、資機材、労力で安全に救助することができれば、問題ないですよね。

      • Kouさん。「引き出し」確かにそうですね。知識や技術の修得(訓練)は大事ですね。それに教科書や訓練で習った事=絶対。とも限りませんよね。送られてくる情報で想定してみても現場に着いたり、関係者からの聞き取りで全然違うこともありますよね。とくに大きな災害現場ではそうですよね。倒壊した家屋に要救助者が取り残されている状況でも、それなりの人数での対応になります。通報が多ければ少人数での活動や資機材、車両振り分けは当たり前。隊長も隊員も現状での安全で確実な救助方法を選択するのは大切になりますよね。

  • ブログ記事のリクエストなんですが、低所への降下方法について、書いていただけませんでしょうか?ロープレスキューの記事を拝見させていただいて思ったのですが、初任課程から教わる座席懸垂降下やその他降下方法がありますが、訓練と現場では状況がまったく違う事が多々あると思います。
    降下を選択する事により、生じる危険性や安全な降下方法とは何か?降下方法を選択する上での注意点などを書いていただけるとありがたいです。ご検討のほどよろしくお願いいたします。

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    ABOUT US

    kou
    10年以上消防士として災害現場の最前線に立った後に退職。 職歴のほとんどを救助隊員として過ごし、隊長、機関員、隊員を経験している。 日本全国各地での大災害にも緊急消防援助隊として活動した経歴をもつ。 退職後は、日本全国の消防士の後輩など災害現場に立ち向かう方に向けた情報や一般の方に防災に関する情報を発信。 このブログの目的は、優良な消防救助防災知識を広めていくこと。 たまに、生活情報も発信します。