はしご(三連梯子、カギ付き梯子)を救助活動に使用してよいのか?

救助

みなさん、こんにちは。

いつも読んでいただきありがとうございます。

 

今回は、「はしご」についての解説です。

消防救助操法やラダーレスキューシステムズは「はしご」を活用した救助方法となっておりますが

そもそも「はしご」をそういった救助活動に使用してもよろしいのでしょうか?

昔から活用されてあるから問題ないんじゃない?
先輩からも教わってるし、消防救助操法にも記載されてあるから活用して普通でしょ。

こう考える方は多いのではないのでしょうか?

結論から言うと

梯子は救助活動を目的とした資機材ではありませんし
メーカーも保証した使用方法ではありません。

もうすこし深堀りしますね。

それでは、まいりましょう。

っと、その前に私の簡単なプロフィールです。
kouと申します。
10年以上消防士として勤務していました。
在職中のほとんどを救助隊として過ごし、隊長、機関員、隊員の経験もあります。
現在は退職して、消防士の後輩向けに情報発信をしています。
もうすこし気になる方はトップページより、プロフィールを御覧ください。

  

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梯子の使用目的

そもそも、梯子はどういった目的で使用するものでしょうか?

一般的な梯子は2本の縦木に足場となる横木を一定間隔で固定したものである。梯子の足場は格(こ)または段と呼ばれる。

一般的な金属製の梯子には、2本の枠がいくつかの格で連結され移動する部分を持たない形状の固定された梯子、固定された梯子が2つまたはそれ以上の長さに分割され保管に便利になっている延長する梯子(その長さは互いにスライドさせることにより最大の長さとなる。地上の操作者によって簡単に延長できるよう、滑車のシステムが付いており、二連梯子、三連梯子などと呼ばれる)、伸縮自在の梯子(枠が短い同一形状の管材でできており、保管のためにそれぞれが内部にスライドする)などがある。

固い梯子は木製や竹製のものがもともと多かった。20世紀にはアルミニウムが軽量であることから一般的になった。電線の近くで作業するための梯子には、絶縁体の竹やガラス繊維強化製の梯子が使われている。他、チタン製でアルミ製よりも軽量なものもある。

出典:wikipedia

とあり、人間の登り降りのために使用するものです。

「はしご」は救助活動をするための資機材として作っていません。

消防専用の三連梯子やカギ付き梯子、単梯子、一般用アルミ梯子のすべてに当てはまります。

とはいえ、こういったオプション資機材が販売されていることも事実です。

梯子クレーン用滑車(出典元:関東梯子)

メーカーさん言うてることと、やってることが違いますやん!

 

 

消防における梯子を使用する目的

では、消防活動において梯子を使用する主な目的は何でしょうか?

  • 高所や低所に進入するため
  • 救助活動に使用するため

ですね。

消火活動時の建物内への進入、救助活動時の高取支点が該当しますよね。

 

メーカーの見解

梯子を使用する時の禁忌事項

梯子を使用する際、どのような使用方法が禁忌となるのでしょうか?

三連梯子は吊り下げて使用するのは想定されておりません。

基底部が地面についている状態での使用を前提として強度計算されています。

このことから注意することは以下の点です。

  • 梯体の横さんそれぞれに2人以上乗らないようにすること
    ※横さん1箇所に対し1人まで

  • 水平に掛けて使用しないこと。(橋として使用しない)

ただし、梯子の素材によって強度に多少差があります。

チタン製なら1人までOK!

 

製造時期によっては

上記で説明した禁忌事項も製造された時期によっては禁忌事項でないモノもあります。

現在販売されている梯子は(チタン、アルミ、鋼鉄含め)

  • 通常通り、立て掛けて使用する時
  • 水平に掛けて使用する時(橋のように)
  • 吊り下げて使用する時(カギ付き梯子)

1箇所の横さんに対して1人は前提として

1つの梯子に対して2人までの使用が可能となっています。

メーカーさんの企業努力は素晴らしいですね。

 

諸元や性能が統一されていればよいのですが、製造年や素材により異なるので

きちんと配備されている梯子の諸元性能を確認する必要がありますね。

救助活動について

救助活動について明記されていないということは

救助活動時に使用されることをメーカーは想定していないということ

メーカーとしては「はしご」を救助活動時の資機材として使用は認めていないのですね。

  

事故事例

救助を目的とした梯子の使用が認められていない中で

梯子を用いた救助訓練中の事故が定期的に起きています。

こういった事故ではメーカーの保証は一切受けられません。

救助活動を目的に製作されていないためですね。

事故予防のためにもその一部を紹介します。

 

梯子の横さんの変形

応急梯子救出の訓練中に起きた事故です。

通常、三つ打ちレンジャーロープで活動しますが

その際に使用していたのは編みロープ(伸び率の低い)で行っていました。

要救助者の救出時、地面に付く前にロープ確保員が急停止させたところ

ロープを通していた梯子の横さんが変形してしまいました。

 

この事故はなぜ起きてしまったのでしょうか?

梯子については、通常使用しているものと変わりありません。

変わっているものはロープです。

三つ打ちレンジャーロープでは起きなかったことが、編みロープでは起きてしまいました。

同じロープでも何が異なっているのでしょうか?

それはロープの伸び率です。

今回の事故時に使用していたロープは特に伸び率の低いものを使用したロープであったことが事故の要因です。

 

さらには、確保員による制動のきかせ方もひとつの要因です。

活動時は、「急」のつく動きは厳禁です。

応急梯子救出や梯子水平救出のような救出法をとる際は、地面に要救助者が着地する前に一度停止させますが

この時に急停止させてしまうと「衝撃荷重」が発生します。

衝撃荷重は、吊っているモノ以上の荷重を発生させてしまいます。

三つ打ちのレンジャーロープでは伸び率によって衝撃荷重を吸収することができていたのですが

伸び率の低い編みロープでは衝撃荷重を吸収できずに

その衝撃が横さんに加わってしまったのです。

「衝撃荷重」を発生させてしまったこと、ロープの伸び率の低さの両方が組み合わさり

起きてしまった事故でした。

 

梯子クレーンの転倒

出典:大阪市

梯子クレーンの救助訓練中に起きた事故です。

梯子クレーンで要救助者とそれに介添えする隊員の2名を引き上げていたところ

三連梯子が転倒し、要救助者役と隊員の2名が落下してしまいました。

 

この事故はなぜ起きてしまったのでしょうか?

要因として、

  • 救出ロープを基底部付近の滑車を折り返して引いたため起きたこと
  • 要救助者役と介添えする隊員の2人分の重量がかかっていたことです。

梯子が固定されている箇所はトラス線と基底部を隊員が押さえているのみです。

トラス線は、梯子クレーンに加わる荷重とロープの伸びを考慮して設定しなければなりませんし

基底部は地物に固定されているわけではありませんので、非常に不安定な状況です。

今回の事故では、救出ロープを梯子に対して沿うようにして引かなければならないところを

基底部部分の滑車を介して力強くロープを引いてしまったことにより

基底部を持ち上げる力が加わり、梯子を跳ね上げ転倒させて起きた事故でした。

解決策

このような事故を未然に防ぐ方法はないのかな?
ヒューマンエラーの他にも要因がありそう。

梯子だけでなく、ロープレスキューにおいてもこのことを意識すると良いよ!

それは 物理学的視点を持つこと です。

 

応急梯子救出の場合

出典元:愛媛県

応急梯子救出の横さんには実際にどのような荷重が加わるのでしょうか?

要救助者の体重が100kgとし、地上から浮いた状態を保つだけで

横さんには200kgの荷重がかかっていることになります。

消防で使用されている梯子の許容荷重は150〜180kgです。

200kgというのは、梯子の許容荷重を超えている状態になっています。

すでに許容荷重を超えているわけですが

引き上げたり、衝撃荷重がかかるとさらに大きな荷重が加わることになります。

そういった大きな荷重が横さんに加われば変形してもおかしくないのです。

 

梯子クレーンの場合

出典元:愛媛県

梯子クレーンの適正な使用について

梯子クレーンの作成、設定要領については消防救助操法に記載されているものの

どのような荷重に対して強く、どのような荷重に対しては弱いのか

記載されているものは多くありません。

 

そのため、検証し把握する必要があります。

三打ちレンジャーロープ、編みロープを使用した時

要救助者の体重、使用する担架などの荷重が梯子クレーンに加わった時に

梯子クレーンが転倒方向へどれほど傾くのか。

現場状況によっても変化するため、臨機に対応できるように備えておきたいですね。

 

以下のリンク先でも梯子クレーンについて解説がされています。

まとめ

いかがだったでしょうか?

「はしご」は救助活動に使用してよいのか?

このことについて、メーカー側はそのような使用意図を考慮していないため

救助活動を目的とした使用に対し保証はできないと明言しております。

 

そういった事情で消防が「はしご」としての使用目的が違うから

災害現場で「はしご」を活用しないということするのは非常にもったいないです。

そのため今後も災害現場において、比較的調達しやすく汎用性利便性の高い救助ツールとして

「はしご」は活用されていくでしょう。

 

ただ、使用目的外の救助活動に「はしご」を活用するのであれば

壊れないという前提ではしごを取り扱わず
予期せぬ荷重が加わることの可能性を把握していかなければなりません。

それによる事故を未然に防ぐためにも「物理学的視点」を持つことが必要です。

学生時代に学んだことのある方は、そういった視点から隊に対して助言するとよいでしょうし

学んだことのない方は、最低限の物理を学ぶことでより視野が広がるでしょう。

物理学は他の分野でも理解度が高まるはずです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

記事の内容に質問や疑問点などございましたら遠慮なくコメント欄にどうぞ。

 

 

参考資料
関東梯子株式会社 

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